湖のように澄み渡った青い羽。美しく清らかな翼。
貴方はその翼で自由に空を駆け巡る。その姿が堪らなく愛おしい。
――でも同時に酷く憎い。
貴方は渡り鳥。
青い翼で高く遠くへ旅をする。青い渡り鳥。冬が来れば貴方は何処かへ消えてしまう。
『私をおいて行かないで……』
囁くような祈りは風に掻き消され、冷たい風が青い花を茶色く染める。
――私の好きな花。
冷たい風に背を向けて忍び寄る冬の気配に気が付かないふりをして
偽りの笑顔で貴方背を追いかける。
空の色を映し出した
貴方の笑顔を心に刻み込む。
ここにしか咲かない小さな青い花。星のような形をしたその花は彼が一番好きな秋の花。
――枯れないで。
この花が枯れれば冬が来る。私と彼の一番好きな花。でも同じくらい嫌いになる。
出会いと別れの花。
貴方は旅立ってしまうけどせめて私だけはここに居よう。長い旅で負った翼の傷も
心の荷物もここで下ろして行けるように。
それが旅立つための準備でも、この花が再び別れを告げるまで
私は貴方の傍にいる。
――そしてまた冬が来る……。
海が見える丘の上から花が消え、青い翼が空高く飛び立つ。
「また春に会おう」
私は貴方の居ないこの場所で貴方の面影を追い求めながら春を待つ。